犯人がトイレのドアを開けた。
その瞬間、時間が止まったように感じた。
俺たちは目で合図を送り、一斉に立ち上がる。
「今だっ!」
全員で飛び掛かった。
銃声が響く。頬をかすめる熱。
だが止まらない。
力自慢の男が後ろから羽交い締めにし、俺は渾身のボディブローを叩き込んだ。
鈍い音。犯人が呻き声を上げ、銃が転がる。
「押さえろ! 腕を!」
誰かが叫び、全員で抑え込む。
暴れる腕を捻じ伏せ、関節を決める。
骨の軋む音が聞こえた。
「うっ……あああ!」
叫び声が響き、やがて静寂が戻った。
機内は泣き声と嗚咽で満たされる。
俺は床にへたり込み、汗と涙で顔がぐちゃぐちゃだった。
CAが無線で操縦室に叫ぶ。
「犯人、確保!」
その瞬間、全員の体から一気に力が抜けた。
