ゲームセンターのあの一角に、異様な存在感を放つ筐体が並んでいた。半球型のスクリーンに囲まれたコックピット、ハッチを閉めた瞬間に別世界へ引き込まれる感覚——機動戦士ガンダム 戦場の絆は、アーケードゲームの概念を根底から覆した作品だった。
2006年11月7日の稼働開始から2021年11月30日のサービス終了まで、約15年にわたって多くのプレイヤーを熱狂させたこのゲームを、マニアックな視点から振り返っていきたい。
P.O.D.筐体がもたらした革命的な没入感
戦場の絆を語るうえで欠かせないのが、P.O.D.(パノラミック・オプティカル・ディスプレイ)と呼ばれるコックピット型筐体だ。プレイヤーが実際に筐体の中へ入り込み、半球状の全周囲スクリーンでモビルスーツの視界を体感する設計は、当時のアーケード業界では前例がなかった。
ハッチを閉めると外の音が遮断され、眼前に広がる戦場だけが世界になる。レバーとペダルでモビルスーツを操りながら、筐体越しに聞こえてくる隣のプレイヤーの「左行って!」という声——あの体験はゲームセンターという場所でしか成立しなかった。
ゲームシステムの核心
ゲームの基本は地球連邦軍対ジオン公国軍のチーム対戦。1チーム最小4名、最大8名で構成され、最大16名が同時に戦場で戦う大規模な対戦が実現していた。複数の筐体がゲームセンター内でネットワーク接続され、さらに店舗間通信によって遠方の店舗のプレイヤーとリアルタイムで対戦できる仕組みは、稼働当時のアーケード業界に衝撃を与えた。
勝敗を左右するのが戦力ゲージだ。自軍のモビルスーツが撃破されると、そのコスト分だけゲージが減少する。先にゲージをゼロにするか、制限時間終了時点でゲージが多い側が勝利となる。高コストの高性能機は撃墜されたときのリスクも大きく、機体選択がそのまま戦略に直結する設計だった。
5種類の機体カテゴリ
登場するモビルスーツは以下の5カテゴリに分類されていた(REV4.x系)。
| カテゴリ | 役割・特徴 |
|---|---|
| 格闘型 | 高い格闘攻撃力を誇る前衛。連撃や素早いクイックドローが武器 |
| 近距離戦型 | 格闘・射撃の両方に対応できるバランス型の前衛。チームの主軸となる万能機体が多い |
| 射撃型 | 威力の高い射撃武器で中距離を保ちながら戦う。立ち回りの巧みさが問われる |
| 支援型 | 異なる距離帯の武器を切り替えながら前線を支援。チームの火力底上げ役 |
| 遠距離砲撃型 | 敵拠点への大ダメージに特化した後衛。高い操作スキルと状況判断が必要 |
ICカードシステム
カードを挿入することで自分だけのパイロットデータが呼び出され、戦績・ランク・出撃回数が蓄積されていく仕組みだった。REV1.x〜2.x系では専用の「パイロットカード」が必要で、カード作成時に連邦かジオンかの所属を決めると変更できない仕様がプレイヤーの「帰属意識」を強めた。REV3.x以降はバンダイナムコ共通の「バナパスポートカード」に移行し、最終的にはAmusement IC対応となった。パイロットスーツのカラーリングやコールサインをカスタマイズできる機能も、自分だけのパイロットを育てる愛着を生んでいた。
思い出の機体たち
両軍あわせて100機以上が実装された戦場の絆。ここでは特にコアプレイヤーに愛された機体を振り返る。
ジオン公国軍
ザクII改(MS-06FZ)/近距離戦型
OVA「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」に登場するジオン量産型ザクの最終発展型。ゲーム内では近距離戦型に分類され、高集弾率・高威力のマシンガンを主武装に持つ。格闘・射撃どちらにも対応できる懐の深さが特徴で、初心者から上級者まで幅広い層に愛された機体だ。あるヘビーユーザーはこの1機に700回以上搭乗したという記録も残っており、その完成度の高さがうかがえる。
グフ・カスタム(MS-07B-3)/格闘型
OVA「機動戦士ガンダム 第08MS小隊」に登場するグフの改良型。ガトリング・シールドとヒートロッドを使いこなす格闘特化機体として、ジオン側の格闘型を代表する存在だった。サブ武器もクセはあるが使いこなすと相手を翻弄できた。
ケンプファー(MS-18E)/格闘型
一撃必殺の瞬間火力を持つ暗殺用モビルスーツ。ショットガンによる至近距離での爆発力は他の追随を許さず、うまく懐に入れたときのダメージ量はゲーム内でも屈指。ただし装甲は薄く、使いこなすには高い立ち回りスキルが求められた。リスクとリターンを理解したうえで乗りこなすプレイヤーに熱く支持された機体だ。
ギャン(YMS-15)/格闘型
ビーム・サーベルとシールドを使った近接格闘特化機体。量産化されなかった試作機という設定もあって原作ファンからの人気は根強く、戦場の絆でも一定数のコアなプレイヤーに愛用された。ミサイルシールドを活かした戦術性の高さが玄人好みの機体として知られていた。
地球連邦軍
陸戦型ガンダム(RX-79[G])/近距離戦型
「機動戦士ガンダム 第08MS小隊」に登場する地上戦専用ガンダム。連邦側の近距離戦型として安定した性能を持ち、長年にわたって愛用プレイヤーが多かった機体だ。「RX-78-2ガンダムよりこっちのほうが好き」と語るプレイヤーも少なくなく、渋い選択を好む中級者以上のファンに根強く支持されていた。
アレックス(RX-78NT-1)/格闘型
OVA「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」に登場するニュータイプ専用試作機。火力はそれほど強くないが、スピードを活かした立ち回りで仲間を守りながらの格闘戦が得意。
ガンキャノン(RX-77-2)/支援型
ファーストガンダムを代表する支援機として、後方から正確な砲撃でチームを支えるスタイルが好きなプレイヤーに長く愛用された。前線の激しい動きを後ろから見ながら砲弾を当てていく戦い方は、近距離戦型とは全く異なる独特の楽しさがあった。
絆体感TV 機動戦士ガンダム 第07板倉小隊
戦場の絆を語るうえで外せない存在が、お笑いコンビ・インパルスの板倉俊之だ。稼働初期から熱狂的なプレイヤーとして知られていた。
その板倉を「隊長」として据えたテレビ番組が、「絆体感TV 機動戦士ガンダム 第07板倉小隊」(テレビ東京系列)だ。2011年10月4日から深夜帯に放送が始まり、全国・海外のプレイヤーチームとアーケード対戦を行うゲームバラエティ番組として大きな話題を呼んだ。出演者全員がオリジナルデザインの制服に階級章を付けて登場するスタイルも印象的で、初回シーズンの成績は5勝23敗と苦戦しながらも、シーズンを重ねるごとに成長していく様子が視聴者を引き込んだ。
番組は断続的にシリーズを重ね、戦場の絆のサービス終了直前の2021年11月には最終シーズン「〜ゆく絆くる絆〜」が放送され、15年の歴史に花を添えた。板倉はこの番組縁で小説「機動戦士ガンダム ブレイジングシャドウ」の執筆まで担当しており、その作品内に登場した機体がゲームに逆輸入されるという異例の展開もあった。
ゲームセンターという場所でしか生まれなかったもの
戦場の絆の開発者・小山順一朗氏はかつてこう語っている。「このゲームのベネフィットは、仲間と一緒に戦場に出て、勝った嬉しさ、負けた悔しさを共有できることなんです」。
筐体から降りた後に隣のプレイヤーと目が合い、自然と会話が生まれる——そんな体験はオンラインゲームでは決して再現できない。見知らぬ人間と肩を並べて作戦を立て、勝てば拳を上げ、負ければ悔しさを分かち合う。ゲームセンターという物理的な空間があったからこそ、戦場の絆は単なるゲーム以上の何かになれた。
豆知識
- 戦場の絆は2006年〜2021年まで約15年稼働した長寿アーケードゲームで、正統続編「戦場の絆II」のサービス開始(2021年7月)と入れ替わる形でサービスを終了した
- P.O.D.筐体は1台あたり約100万円、ターミナルは1台500万円といわれ、全国のゲームセンターに数多く設置されていた。その大きさと存在感から、店内での配置は一大イベントだった
最後に
私自身戦場の絆は大好きでかなりやり込んだゲームでした。今までゲームをやり込むと全国でも上位まで行くことが多かったが、この戦場の絆はそこまで行くことはできず、それだけプレイヤーも多くレベルの高い人が多かったと感じています。対戦時に 元帥 大将が出てくると仲間なら安心し、敵であれば終わった・・・と感じたことを覚えています。最初は1ゲーム500円と高額であったためプレイヤーの年齢層も高かったことも特徴でした。いまだにYOU TUBEで動画も流れており、視聴数も多いため、復活を願っているファンも多いのではないでしょうか。熱狂的なファンが力を合わせれば復活させることも可能ではないかと思います。


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