子どもたちの笑い声は、いつの間にか遠くへ消えていた。
さっきまでお菓子を投げてもらい、興味津々で囲まれていたのに、飽きるのはあっという間だ。期待してはいなかったが、「家につれて帰る」という言葉は一度も聞こえなかった。まあ、そんなに都合よくはいかない。子どもたちが去った公園は、急に広く、静かに感じられた。
空腹は満たされた。
なるほど、野良猫というのはこうして日々を生き延びているのか。誰かに少し恵んでもらい、残りは自分でなんとかする。確約はないが、今日を乗り切れたのなら、それで十分だ。腹が落ち着くと、少し気持ちにも余裕が生まれた。
次に考えるのは寝床だ。
猫の体で夜を過ごすには、安全で風を避けられる場所が必要だ。昨日どこで眠ったのか思い出せないが、寒くて不安だった夜の記憶が蘇る。あんな夜はもう二度とごめんだ。野良猫はどこで眠るのか……植え込みか、段ボールか、それとも木の下か。
公園をぐるりと見回すと、草むらの奥にぼろぼろの段ボール箱を見つけた。誰かが捨てたのだろう。形は歪んでいるが、入り込めば風をしのげそうだ。段ボールに頭を突っ込み、中を確かめると、想像以上に居心地がよさそうだ。今日の寝床はここに決めた。
まだ日は高く、段ボールに潜り込むには早すぎる。夜になれば、未知の世界と暗闇が訪れる。もう少し散歩して、猫としての身体の感覚や動きを確かめておこう。
そう思い、僕は公園の小道をゆっくり歩き始めた。
初めての野良猫としての夜が、もうすぐやってくる。
