第5話 初めての“会話”

公園に着くと、予想通り子どもたちがいた。
ベンチの周りに集まり、お菓子を食べながら笑っている。
その匂いが、空腹の俺にはたまらなく刺激的だった。

問題は……どう声を出すかだ。
俺は猫の姿だが、言葉を話せるのか?
それとも鳴き声しか出ないのか?

試しに、思い切って言ってみた。

「おーい」

子どもたちがぴくっと反応して、こちらを見る。
……お? 聞こえてるのか?

もう一度、腹に力を入れて呼んでみた。

「おーい!」

すると一人の子どもと目が合った。
だが、その顔は“猫を見て微笑む顔”であり、
どうやら俺の声は「みゃー」とか「にゃー」とか、そんなふうに聞こえているらしい。

ちょっと安心しつつ、勇気を出して足を進めた。

近づいて、言ってみる。

「お菓子ちょーだい」

子どもたちは目を丸くし、興味津々で俺を見つめる。
何か感じ取ったのか、一人が優しく問いかけた。

「お腹すいてるの?」

ありがたい……。

「そうだよ」

そう答えたつもりだが、彼らには「にゃー」に聞こえているはずだ。
だが、その反応から察するに、なんとなく“気持ち”は伝わっているようだった。

再び聞かれる。

「ほんとにお腹すいてるの?」

「そうだよ、なにか欲しい」

俺の声に子どもたちは大喜びで、
「この猫、言葉が通じるぞ!」
と騒ぎ始めた。

そして持っていたお菓子をひとつ、ぽいっと投げてくれた。

すぐさま飛びついて食べる。

……うまい。
甘さが体に沁みわたる。

「もっと欲しい」

とお願いすると、また投げてくれた。

何度か繰り返し、腹が満たされていく。
空腹が和らぐにつれ、心も落ち着いてくる。

――人に声が届く。
猫としての最初の希望が、ほんの少し見えた気がした。

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