第4話 「途中」

目的地に向かい、車を走らせる。

まだ半分も来ていないが、早くも少し疲れてきた。

眠気を誤魔化すようにラジオをつけても、知らない曲が流れてくるだけだ。

「……腹でも満たすか。」

そう呟き、ドライブスルーのあるハンバーガー屋に入った。

セットを買い、少し先のコンビニ駐車場に車を停める。

ポテトをつまみながら、ぼんやり考えた。

親は裕福ではなかった。

贅沢もせず、いつも同じような生活。

けれど、食べるものに困ることもなく──“普通”という言葉が一番しっくりくる家庭だった。

年に数回の家族旅行を思い出す。

海や温泉、道中で聴いたラジオ。

小さな車に荷物を詰めて、くだらない話をして笑っていた。

あの頃は、確かに楽しかった。

「もしかして、宝って……家族の思い出ってことか?」

思わず口にして、自分で苦笑いする。

だったら、こんな場所に隠す必要なんてない。

ハンバーガーを食べ終え、エンジンをかける。

少し走ると、パチンコ屋のネオンが目に入った。

なぜか“今日は勝てる気がする”という根拠のない予感がした。

気づけば駐車場に車を入れていた。

結果は、出たり飲まれたりの繰り返し。

結局、二万円の負け。

「やっぱりな……」

小さくつぶやき、レシートの裏で汗を拭う。

外に出ると、空はすっかり暗くなっていた。

街灯が少ない田舎道、フロントガラスに映る自分の顔が少し疲れて見えた。

「こんな暗い中、行くのか……」

一瞬、引き返そうかと思った。

だが、ここまで来て戻るのも癪だった。

ナビを再設定し、アクセルを踏む。

目的地までは、あと40分。

ヘッドライトが照らす細い道の先に、黒い森の影が見えていた。

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