箱の中には、銀色の鍵ともう一枚、折り畳まれた紙が入っていた。
広げてみると、手描きのような地図だった。
赤い線でぐるぐると囲まれた印があり、その下には読めないほどかすれた文字。
「……まさか、宝の地図とか?」
思わず笑ってしまった。
明確な地名は書かれていない。
だが、高速道路らしき線が交差している部分を見ると、ここから車で二時間ほどの山の中のように思える。
それにしても、どうしてこんなものが?
自分の過去の記憶を探っても、こんな地図に心当たりはない。
しばらく考え込んでいると、ふと一つの記憶が浮かんだ。
──親が亡くなったとき、遺品と一緒に渡された段ボール箱。
書類や古い通帳が入っていて、重いからとりあえず押し入れにしまった。
その中に、確かこの箱もあったような気がする。
「ってことは、親のものか……?」
思わず呟き、もう一度地図を見つめる。
宝物が本当にあるのかは分からない。
だが、妙に気になって仕方がなかった。
明日は休み。やることもない。
「……ちょっと見に行ってみるか。」
そう呟いて、スマホのマップアプリを開いた。
地図の形を照らし合わせると、場所は確かに山の中。
車で近くまで行っても、最後は歩く必要がありそうだった。
2時間の運転に加え、山道を30分ほど歩く。
考えただけで面倒くさくなってきた。
「いや、やっぱりやめよう。」
地図を畳み、再び箱に戻した。
ただ、その夜。
布団に入っても、頭の片隅で赤い印がちらついて離れなかった。
まるで呼ばれているような、不思議な感覚だった。
