第3話 決意

時間の感覚が消えていた。

誰も動かず、誰も声を出さない。

だが、俺の中で何かが変わった。

怖い。でも、このまま終わるのはもっと怖い。

俺は青年に声をかけた。

「どうせ死ぬなら、戦ってみないか。」

反応はない。

だが、その言葉が自分を奮い立たせた。

さらに奥のサラリーマンに視線を送る。

目が合った。わずかに頷いた。

その頷きだけで、少しだけ空気が変わった。

俺は静かに立ち上がり、近くの男たちに声をかけていく。

六人。恐怖に震えながらも、誰も「嫌だ」とは言わなかった。

「次にあいつがこっちに来たら、全員でかかる。」

その作戦を共有し、息を殺して待つ。

犯人は操縦室のドアを蹴っていたが、諦めたように戻ってきた。

CAをもう一度人質に取ろうとして、通路を歩いてくる。

距離が縮まる。呼吸の音すら聞こえる。

俺たちは目を合わせた。

今だ――。

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