夜の街を一人で歩きながら、俺は考えていた。
ここまでの成功は、果たして俺自身の力なのか。それとも、あの老人の計算された導きなのか。
約束の場所で待つおじいちゃんと再会した瞬間、全てがわかった。
「君、順調だね」と微笑む彼の瞳には冷たい光が宿っていた。
彼の正体は、裏社会の創設者の一人であり、組織の“粛清役”。俺は気づかぬうちに、彼の駒として利用されていたのだ。
会議室に並ぶ金と書類、そして動かされる人間たち――全てが緻密に計算された舞台。
おじいちゃんの微笑は、ただの祝福ではなく、俺の忠誠心と行動を試すためのものだった。
胸の奥で、かつての良心がわずかに痛む。だが、手元の札束と権力の匂いに、理性は静かに押し潰されていく。
「君に任せる。だが、裏切れば即座に消す」と告げられた瞬間、世界の重さが違った。
俺は理解した――ここから逃げることはできない。
そして、気づいた時には、既に裏切りの予感は現実の影となって、背後から迫っていた。
