掘り出した鞄を外に出し、土を払う。
静かな闇の中、ザッ、ザッという音だけがやけに響いた。
一通り土を落とし終え、鍵穴を覗く。中にも土が詰まっていたので、指で丁寧にかき出す。
鍵を差し込む。
カチリ。思ったよりもあっさり回った。
「……開いた」
ガチャという音とともに、蓋がゆっくりと持ち上がる。
中にはビニール袋に入った札束がぎっしりと詰まっていた。
一瞬で息が詰まる。
「……現金、か?」
スーツケースの中は、まるで地層のように積み上がった金の山。
「これ、いくらになるんだ……」
思わず辺りを見渡す。
虫の声、木の軋む音。人の気配はまったくない。
怖さよりも、先に湧いてきたのは“安心”だった。
ここには誰もいない。
誰も見ていない。
カバンを閉め、車へと戻る。
現金が敷き詰められたスーツケースは想像以上に重い。
ズリズリと引きずりながら来た道を戻った。
車に着くと、すぐにトランクに詰め込み、ドアを閉める。
心臓がまだ速く打っている。
エンジンをかけ、闇の道を抜けて走り出した。
しばらく走ると、少しだけ冷静さを取り戻した。
「……これ、どうする?」
ハンドルを握る手のひらが、汗でじっとりと濡れていた。
