機体は無事に羽田へ緊急着陸した。
ドアが開くと同時に、警察と救急隊がなだれ込む。
犯人は拘束され、俺たちは事情聴取のために別室へ。
椅子に座ると、ようやく呼吸が整ってきた。
あのCAも奇跡的に命を取り留めたと聞き、涙が溢れた。
生きている――。
その事実だけで、全身が震えた。
誰かが肩を叩き、「ありがとう」と言った。
俺は笑うことも泣くこともできず、ただうなずいた。
窓の外に見える東京の街。
もしあのまま突っ込んでいたら、ここにはもう存在していなかった。
「多くの命を救ったんだ」
そう言われても実感はない。
ただ、あの瞬間に自分が“生きようとした”ことだけは、確かに覚えている。
――あれほど怖くて、
あれほど生を感じた瞬間は、
生涯、もう二度とないだろう。
