時間の感覚が消えていた。
誰も動かず、誰も声を出さない。
だが、俺の中で何かが変わった。
怖い。でも、このまま終わるのはもっと怖い。
俺は青年に声をかけた。
「どうせ死ぬなら、戦ってみないか。」
反応はない。
だが、その言葉が自分を奮い立たせた。
さらに奥のサラリーマンに視線を送る。
目が合った。わずかに頷いた。
その頷きだけで、少しだけ空気が変わった。
俺は静かに立ち上がり、近くの男たちに声をかけていく。
六人。恐怖に震えながらも、誰も「嫌だ」とは言わなかった。
「次にあいつがこっちに来たら、全員でかかる。」
その作戦を共有し、息を殺して待つ。
犯人は操縦室のドアを蹴っていたが、諦めたように戻ってきた。
CAをもう一度人質に取ろうとして、通路を歩いてくる。
距離が縮まる。呼吸の音すら聞こえる。
俺たちは目を合わせた。
今だ――。
