第2話 崩れる心音

CAが犯人に引きずられ、操縦室のドアの前に立たされた。

「開けろ! 今すぐだ!」

ドアを叩く鈍い音が響く。

俺はただ震えながら見ていた。

その瞬間、乾いた銃声。

CAの体が崩れ落ちた。

悲鳴、嗚咽、混乱。誰かが吐いた。

銃口の煙が薄く揺れ、焦げた薬莢の匂いが鼻を刺す。

冷や汗が背中を伝い、頭の中が真っ白になる。

「死ぬのか……ここで?」

その言葉が脳内でこだまする。

窓の外では、太陽が静かに光っていた。

あまりにも平和で、現実とのギャップが狂気じみている。

犯人はまだ操縦室には入れていない。だが、時間の問題だ。

誰も立ち上がらない。

死の気配が機内全体に広がっていく。

隣の席の青年が小さく泣いているのが見えた。

俺は無意識に口を開いた。

「……このままじゃ全員死ぬぞ。」

心臓の鼓動が、死のカウントダウンのように鳴り続けていた。

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