第2話 「地図」

箱の中には、銀色の鍵ともう一枚、折り畳まれた紙が入っていた。

広げてみると、手描きのような地図だった。

赤い線でぐるぐると囲まれた印があり、その下には読めないほどかすれた文字。

「……まさか、宝の地図とか?」

思わず笑ってしまった。

明確な地名は書かれていない。

だが、高速道路らしき線が交差している部分を見ると、ここから車で二時間ほどの山の中のように思える。

それにしても、どうしてこんなものが?

自分の過去の記憶を探っても、こんな地図に心当たりはない。

しばらく考え込んでいると、ふと一つの記憶が浮かんだ。

──親が亡くなったとき、遺品と一緒に渡された段ボール箱。

書類や古い通帳が入っていて、重いからとりあえず押し入れにしまった。

その中に、確かこの箱もあったような気がする。

「ってことは、親のものか……?」

思わず呟き、もう一度地図を見つめる。

宝物が本当にあるのかは分からない。

だが、妙に気になって仕方がなかった。

明日は休み。やることもない。

「……ちょっと見に行ってみるか。」

そう呟いて、スマホのマップアプリを開いた。

地図の形を照らし合わせると、場所は確かに山の中。

車で近くまで行っても、最後は歩く必要がありそうだった。

2時間の運転に加え、山道を30分ほど歩く。

考えただけで面倒くさくなってきた。

「いや、やっぱりやめよう。」

地図を畳み、再び箱に戻した。

ただ、その夜。

布団に入っても、頭の片隅で赤い印がちらついて離れなかった。

まるで呼ばれているような、不思議な感覚だった。

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