金を持つということが、こんなにも人生を変えるとは思わなかった。
最初は部屋を整えただけだったが、それだけで毎日の景色が違って見える。
朝の光が窓から差し込む瞬間、部屋全体が金色に染まり、
自分の人生まで照らされているような気がした。
不思議なことに、金を手にしてから俺は明らかに変わった。
道路で合流しようとする車がいれば自然と譲り、
電車では迷いなく席を差し出す。
誰かが怒鳴っていても、以前のようにイライラしない。
「どうせ、この人にも何か事情があるんだろうな」と思える。
心に“余白”が生まれたと言えばいいのだろうか。
昔はギリギリの心で生きていた。
小さなことで怒り、小さなことで落ち込み、
いつも何かと戦っていた気がする。
だが今は違う。
金は確かに人を変える。
悪い意味ではなく“良い方向に”。
金があると、人は寛容になれる。
ゆとりがあるというだけで、
こんなにも世界の見え方が違うのかと驚くほどだ。
スーパーで迷っていた高級肉を迷わず買い、
食卓にはちょっと贅沢な総菜を並べる。
旅行先を調べるときでさえ、値段の欄を見る前に行きたい場所を選ぶ。
これまで抑え込んでいた“やりたいこと”が、
次々と湧き上がってくる。
「お金は持つものなんだ」
それが自然と理解できた。
お金に振り回されるのではなく、
堂々と手の中で静かに抱えておくもの。
この穏やかで、少しだけワクワクする日常は、
もはや以前の“普通の生活”とは比べ物にならない。
金の存在が、俺の人生を“豊かさ”という別の次元へ引き上げてくれたのだ。
まだこの先に何があるかわからない。
だが、
「もっと人生を使ってみたい」
そんな前向きな欲が、また静かに胸の奥で灯り始めていた。
