第二話:交換 — 壊れても、次の機体へ

砲煙の中で、俺は機体を失っても即座に「次」へ移る訓練を受けていた。意識の移植は素早く、昔ハマったゲームで培った指の感覚が思いの外役に立つ。敵の波を次々と捌き、ロボットを撃破していく自分に、かつての夜更かしが笑う。だが敵は無限に湧く様に見える。壊しても壊しても増える影。遠隔だとしても、操作の疲労は実体験に等しい。視界に映る同僚の残像、無線越しの息遣い、旋回のたびにくる微かな吐き気─戦闘は身体の深部を削っていく。次の機体に飛び移るたび、現実と虚像の境界が薄れる。勝利の数だけ、何かを失っている気がした。

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