おじいちゃんからの「次」は桁が違った。
相手は警察の一部と癒着する政治家、そして官僚の影が見える大口の案件。国を揺るがすほどの金が動くと聞かされ、胸の鼓動は血に似た熱さで満ちた。
初めて足を踏み入れた夜、会議室には札束とパスポート、大きな権力者の名刺が散らばっていた。俺は指示を出し、駒を動かし、嘘をつくことを学んだ。取引は巧妙で、表向きは公益、裏では丸ごと奪い取るシステムだ。
逮捕されるのはいつも下っ端だけ。責任の線引きは完璧に作られている。だから俺はだんだん思い上がった。誰も本気で俺に背を向けられない。必要なら、この国の片隅から人間を消すことだってできる――そんな幻想が芽生えた。
だが会議の後、おじいちゃんは静かに笑い、言った。「次は大きく動く。君の働きを試す時だよ」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥で小さな不協和音が鳴った。勝利の予感と、知らぬ間に組まれた罠の匂いが同時に迫ってきていた。
