幹部として頂点に立った俺の世界は、光と影が入り混じる帝国だった。金は手に入り、人は動き、警察も政治家も俺の手の中で踊る。だが、そのすべては幻だった。
ある夜、おじいちゃんからの電話。穏やかな声で、全ての計画の暴露を告げられた。組織内の証拠、仲間の裏切り、俺が手にした金の行方――すべて俺を罠に嵌めるための仕組みだったのだ。
震える手で札束を握りしめる。警察の車両のサイレンが遠くで聞こえる。
「君はよくやった。しかし、若い芽は早く摘む」
その声に、長年信じた忠誠も誇りも、静かに砕かれる音がした。
目の前の光景が、夢か現実か区別がつかない。
俺の手で命じた仕事、逮捕された下っ端たちの顔――すべてが俺を見下ろしているように感じた。
街は生々しく、冷たく、そして静かに俺を飲み込もうとしていた。
闇の頂点から落ちる感覚は、風のない夜に落ちる石のように重い。
手を伸ばせば、まだ何かを掴める気がするのに、指先は空を切る。
この世の底で、俺は初めて、孤独と絶望をリアルに知った。
