横断歩道の向こう側4

夜の街を一人で歩きながら、俺は考えていた。

ここまでの成功は、果たして俺自身の力なのか。それとも、あの老人の計算された導きなのか。

約束の場所で待つおじいちゃんと再会した瞬間、全てがわかった。

「君、順調だね」と微笑む彼の瞳には冷たい光が宿っていた。

彼の正体は、裏社会の創設者の一人であり、組織の“粛清役”。俺は気づかぬうちに、彼の駒として利用されていたのだ。

会議室に並ぶ金と書類、そして動かされる人間たち――全てが緻密に計算された舞台。

おじいちゃんの微笑は、ただの祝福ではなく、俺の忠誠心と行動を試すためのものだった。

胸の奥で、かつての良心がわずかに痛む。だが、手元の札束と権力の匂いに、理性は静かに押し潰されていく。

「君に任せる。だが、裏切れば即座に消す」と告げられた瞬間、世界の重さが違った。

俺は理解した――ここから逃げることはできない。

そして、気づいた時には、既に裏切りの予感は現実の影となって、背後から迫っていた。

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