俺はスロットで金を稼ぎ、生きている。
華やかとは程遠いが、食うには困らない。月に二十万ほど稼ぎ、そこから生活費を引き、残った金でまたホールへ向かう。そんな生活が、ここ数年続いている。
同世代の連中は会社で働き、上司の愚痴や昇進の話で盛り上がっている。だが俺には、そんな話が退屈で仕方なかった。気づけば飲みの誘いも減り、連絡も途絶えた。孤独? いや、むしろ快適だ。人付き合いなんて、勝ち負けの世界では意味を持たない。
大学時代、友人に誘われて初めてスロットを打った。負けたのに、不思議と面白かった。あの時の光と音の洪水、心臓が高鳴る感覚。それ以来、俺はどっぷりとスロットに沈んでいった。
最初は遊びだった。だが、金が尽きると遊びでは済まなくなった。どうすれば勝てるのか。俺はグラフを何千と眺め、傾向を探した。勝つ台には、ある“形”がある。連チャンの波、ハマりの深さ、出方のタイミング――。そしてある日、気づいたんだ。八割の確率で勝てるパターンを。
次の日、試してみた。狙い通り、出た。翌日も出た。まるで未来を読んでいるような感覚。電飾の光が、祝福のように瞬いて見えた。
その時、俺はもう引き返せなかった。
