【第六話】 終焉のグラフ

店長の言葉が耳の奥で何度も反響していた。

「探している」──その一言が心臓を握り潰すように響く。

俺は恐怖を隠すように帽子を深くかぶり、顔を伏せて店を後にした。

外の風が妙に冷たく感じた。

駅まで早足で歩き、何本か見送ったあと、ちょうど来た電車に飛び乗る。

車内では落ち着かず、つい周りを見回してしまう。

逆に怪しまれるかもしれないと思って、じっと前を見つめる。

だが、やっぱり視線が気になってキョロキョロしてしまう。

――明らかに挙動不審だった。

それでも何とか家に着いた。

鍵を二重にかけ、窓の施錠も確認する。

もうしばらく外には出ない──そう心に決めた。

何事もなく二日が過ぎた。

緊張のせいで食欲もなく、口にしたのは水だけだった。

三日目の朝、ようやく空腹に耐えかねてデリバリーを頼むことにした。

インターホンが鳴り、モニターを見た瞬間、心臓が止まった。

──奴らだった。

扉を開けた途端、強引に押し込まれ、ナイフの銀色が光る。

「やっと見つけたよ」

あの時と同じ声。だが、今度は笑っていなかった。

「俺らを舐めたことを後悔させてやる」

冷たい言葉が耳に突き刺さる。

俺は必死に説得した。「もう一度教える、一緒にやろう」と。

だが、奴らの目はもう人間のそれではなかった。

俺は観念した。

時間が止まるような感覚の中で、人生を振り返る。

スロットに出会わなければ――

あんなグラフの癖なんて、見つけなければ――

最後に頭をよぎったのは、いつも見ていた出玉グラフだった。

右肩上がりのその線は、まるで俺の運命そのもののように、

頂点から真っ逆さまに落ちていった。

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