店長の言葉が耳の奥で何度も反響していた。
「探している」──その一言が心臓を握り潰すように響く。
俺は恐怖を隠すように帽子を深くかぶり、顔を伏せて店を後にした。
外の風が妙に冷たく感じた。
駅まで早足で歩き、何本か見送ったあと、ちょうど来た電車に飛び乗る。
車内では落ち着かず、つい周りを見回してしまう。
逆に怪しまれるかもしれないと思って、じっと前を見つめる。
だが、やっぱり視線が気になってキョロキョロしてしまう。
――明らかに挙動不審だった。
それでも何とか家に着いた。
鍵を二重にかけ、窓の施錠も確認する。
もうしばらく外には出ない──そう心に決めた。
何事もなく二日が過ぎた。
緊張のせいで食欲もなく、口にしたのは水だけだった。
三日目の朝、ようやく空腹に耐えかねてデリバリーを頼むことにした。
インターホンが鳴り、モニターを見た瞬間、心臓が止まった。
──奴らだった。
扉を開けた途端、強引に押し込まれ、ナイフの銀色が光る。
「やっと見つけたよ」
あの時と同じ声。だが、今度は笑っていなかった。
「俺らを舐めたことを後悔させてやる」
冷たい言葉が耳に突き刺さる。
俺は必死に説得した。「もう一度教える、一緒にやろう」と。
だが、奴らの目はもう人間のそれではなかった。
俺は観念した。
時間が止まるような感覚の中で、人生を振り返る。
スロットに出会わなければ――
あんなグラフの癖なんて、見つけなければ――
最後に頭をよぎったのは、いつも見ていた出玉グラフだった。
右肩上がりのその線は、まるで俺の運命そのもののように、
頂点から真っ逆さまに落ちていった。
